2011/09/03
軽くなるコトバ
「コラボレーション」
企業同士、雑誌とブランド、ショップの共同企画など
色々な分野で利的協力をする場合、コラボレーション
という言葉を用いる。
音楽の世界ではゲスト的な場合はフィーチャリング
というのが普通だが、それすらコラボと言ったりする。
様々な業界で二つ以上の人や団体が一緒になりさえ
すればコラボと称しているようだ。
別段新しくも無いことが新しいことのように聞こえてし
まう。服の世界では、これまで同様に工場に発注して
いるのに「ファクトリーとコラボして」などというフレーズ
が出てくる。工場と物作りをするのは当然のことなのに。
「熟練の職人」
日本、いや世界には熟練の職人が大増殖しているらしい。
無論、本物の職人には大いに敬意を表する。普通の仕事
しかしていない製作者が職人扱いをされ、しまいには熟練
というおかんむりまでもつく始末。最近は数年で熟練の職
人になれるようである。工場に赴くと実のところは、パート
アルバイトや季節労働の人たちだったりする。本当にその
人にしか出来ない技なのか。コストさえ許せば誰にでもで
きる単なる仕様なのか。その辺の判断がビミョー。
「秘伝の〇〇」
熟練と似ているが、飲食店などが用いることが多い。
秘密にして特別な人にのみ伝授された奥義のはずである。
食品のパッケージに「秘伝の〇〇」と書かれている。いつ
誰に伝授されたのか?
60年代のカルダンのスーツは今に通用しない。既に完結し
ていたスーツスタイルに、その時代の華を添えただけ。
人生の待ち時間ではそれしかできない。
熟練や秘伝はそう簡単に、出来はしない。
メディアはヒットソングを探し続けるから誇張した表現を好む。
そして、言葉の重みが消えていく。
月刊 はかた 9月号 スーツのはなし 笹川正章 より