2010/12/05

10年後の未来




   00年の年末、出張で東京にいた。本誌編集長が私の携帯を鳴らした。

「来年、1月号から掲載したいので、原稿お願い!!」と、

何とも唐突な話ではあったが、一応了承する旨を伝えた。

ホテル備え付けの便箋に書き下ろしてFAX。

文字数等もテキトーなまま、校正するまもなく一発掲載。

あれから10年が過ぎた。

スーツというものの定義を再度。ジャケット・ヴェスト・トラウザーズの3点。

あるいはヴェストなしの2点で揃いの生地で仕立てたもの。

オフィスワーカーの服装として確立されたのは30年代後半である。

形状としては19世紀末には存在するが、上下共地ではなかった。

スーツの未来を誰が想像し得たであろうか。

条件が揃えば、男性服の中で最もエレガントなものがスーツである。

条件とは時・場所・場合。季節や時刻。自社も含めた訪問先。天候や職務内容。

ただ、これらは外的条件である。もうひとつ忘れてならないのが、スーツそのものが持つ

内的条件だ。カット(パターン・裁断)、色、生地であるが、列記した順に優先する。

どんなに色柄がよく高級素材であってもカッティングの悪いスーツに妥協するのは良くない。

逆に言えば、少々意地が悪くてもカタチの良い物を買い求めるべきだ。

百年ほどの歴史を経て、生地も副資材(芯地など)もずいぶんと軽くなった。

最近でこそ、地球温暖化や空調の発達が一因とされているが、元来、服装そのものが

カジュアル化の歴史を辿っていることも否めない。軽いスーツの製造にかけては、英国よりも

イタリアのほうがリードしている。我々もそれに憧れ、標榜してきた。

スーツの聖地、英国サヴィルロウ。

難攻不落と思っていたが、今やテーラーが姿を消し始め、再開発の危機に

瀕していると聞く。先達の技術と若いエネルギー、10年後の未来に期待したい。



月刊 はかた   「スーツのはなし」 VOL・120   笹川正章 





今日の仕立て上がり


Y 様

ジャケット

ROBERT NOBLE(英) 

WOOL55%、COTTON45%  310g/m












































M 様

コート

LORO PIANA(伊) WINTER ZELANDER

WOOL100%  370g/m






























































E 様

シャツ

120/2 × 120/2







































E 様

シャツ

ALBINI(伊)